讃岐(香川県)の地は、醤油の本場であると共に弘法大師空海出生の地でもあります。
その讃岐で醤油屋を営んでいながら、大師に由来したかもしれない「醤油画」の存在すら知らなかった!我ながら何という迂闊、何という不敏―という深い悔悟の念が、福岡アジア美術館で小沢氏の「醤油画資料館」を初見した時の第一印象でした。
しかし、それにしては何かおかしい怪しい。館員さんに尋ねてこれがすべて小沢氏の創作による架空の「パラレルワールド」であること知らされ、爆笑して何回も何回も見直した時の得も言われぬ納得感―あれはまさに「芸術」に触れた時のカタルシスそのものでした。
しかも、そこに展示されている「醤油画」の歴史に、地方の醤油屋として自分でも何か脚色や演出を加えることが出来そうだという「参加」への期待感は、後に知った小沢氏の「なすび画廊」や「相談芸術」に通底する楽しさではありませんか。
「これを醤油屋がスポンサーしない手はない!」と確信して、それでも恐る恐る佐野画廊経由オオタファインアーツさんに声をかけていただいたのが「讃岐醤油画資料館」開設計画(!)の始まりでした。
弘法大師は入唐して真言の奥義を授かり、日本一の書家にして一生の内に何十もの寺を建立し、何百もの仏像を彫り、井戸や池まで開鑿・築造した超人です。「醤油画」技法の開祖であっても何の不思議もありません。
「讃岐醤油画資料館」が大師伝説にトホホなユーモア溢れる一頁を加えてくれることを願って止まない次第です。
鎌田醤油株式会社 鎌田郁雄
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